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日本の収納ビジネス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)及びセルフストレージ市場について、市場環境の視点から10回にわたってレポートします。 第1回 収納ビジネスとは? 第2回 人口・世帯数のマクロトレンドと収納サービスの利用者の拡大 第3回 住宅と収納ビジネス 第4回 「レンタル収納」と「コンテナ収納」 第5回 「レンタル収納」の市場トレンド 第6回 「コンテナ収納」の市場トレンド 第7回 不動産ビジネスとしての収納ビジネス 第8回 GISデータからみた収納ビジネス 第9回 生活者アンケート結果から見る収納ビジネス 第10回 今後の収納ビジネスの可能性
レポートを寄稿していると、「収納ビジネス」と「収納サービス」という言葉が入り混じってしまい、読みにくかった部分があるかと思います。事業者視点では「収納ビジネス」、生活者視点では「収納サービス」として使い分けをしていたつもりでした。 「利用者(もしくはモノ)で賑わうのが不動産」とするならば、収納ビジネスはその対極にあるかもしれません。それでもやっぱり、「サービス業」としての視点が必要かなと考えています。 現在、国内にレンタル収納・コンテナ収納あわせると、約35.5万室あり、全国で1世帯当たりの収納サービス(コンテナ収納とレンタル収納)のスペース数(室数)は、0.0066室となり、約152世帯に1室となっています。 日本の収納サービスの比較対象として挙げられる米国のセルフストレージ市場は、2011年時点で約2,830万Unit(室)もある(日本の室数はアメリカの約1.3%しかない)。この数字は、アメリカ国民一人当たり0.09室(11人に1室)、世帯数でいえば約4世帯に1室の規模となります(2012 SELF-STORAGE ALMANACより算出)。仮に、アメリカの1/20の市場規模に達するとしたら、現在の約4倍まで市場は成長する可能性があります。 既に拠点の集中する首都圏(1都3県)でみてみると、0.0140室と全国の約2倍の供給密集度となっている(約71世帯に1室)。さらに都県別にみると、東京都0.0163室(約61世帯に1室)、神奈川県0.0136室(約74世帯に1室)、埼玉県0.0145室(約69世帯に1室)、千葉県0.0081室(約124世帯に1室)となっています。したがって、東京都に限定していえば、アメリカのセルフストレージ市場の1/20規模まで、ようやくたどり着いたともいえます。 アメリカでは既に市場からも、生活者からも「収納サービス(セルフストレージ)」の認知度は高く、生活(ライフスタイル)の一部になっているといえます。生活者に寄り添うようなサービスがなくても、生活者が自発的に利用できる市場環境にあるといえます。 しかし、日本では、ある程度の認知度は上がってきているものの、利用率のブレイクスルー・ポイントには達していません。
弊社でのアンケート調査の自由記述欄に、郊外にお住いの年輩の方が次のようなコメントの記載がありました。 「戸建住宅に住み続けているので、不動産会社に問い合わせるというだけで大きなプレッシャーです。不動産会社の強引な営業も嫌いです。気軽に安心して相談できるヒトがいるならば利用を考えてみたいです。」 契約業務があるため、取り扱いが不動産事業者、仲介事業者であることが多く、どうしてもその市場のイメージが染みついている意見でした。 市場をみるときにどうしても立地・金額・サービス内容(空調・セキュリティー等)といった施設面の項目しかみてきませんでした。「場所貸し」という見方・固定概念がいつのまにかできあがっていました。そこが生活者のハードルになっていることに気付かされたご意見でした。潜在需要というのは、こういうところなのかもしれません。利用に至る一歩手前のところで利用者は立ち止まっている可能性が高いということに気づかされた気がします。 他の業界ではありますが、ブックオフは店舗に買取製品を持ってくるのを待つのではなく、自らが取りに行くサービスをしています。同様に一部の収納サービス事業者では、配送サービスを実施している事業者もあります。法的に難しい部分もありますが、施設に「ヒト」と「モノ」を招きいれるサービスやイベント等が必要ではないかと考えています。例えば、チラシやDMを撒いて施設のPRだけをするのではなく、体験サービスや宝探しといったイベントのようなもので、地域に「収納サービス」があることを認知してもらうことが重要ではないかと思います。「ひと気のない倉庫」ではなく、オープンで明るい倉庫(収納施設)というアピールがもっと増えると市場に活気が生まれてくるのではないかと思います。
レンタル収納やコンテナ収納、トランクルームといった収納サービスの認知度はまだまだ決して高いものではありません。一般的に収納サービスを紹介する一言は、「物置や押入れの荷物を外部に預けましょう」というのは最もわかりやすいサービスの説明ではあるが、「なんで物置のもの、押入れのものを預けるのにお金がかかるのか?」「そのお金を払うことで何か私にいいことがあるのか?」といった疑問にはあまりサービスの説明として答えられていない気がします。 むしろ、「使わないと損」という状況を作り出す生活者への提案・仕組みづくりが必要と考えます。駐車場には必ず付いてくる、賃貸住宅の家賃に含まれている、引越し・リフォームをすると必ず付いてくる、高齢者施設に入居するときに必ず付いてくる・・・などなど、いつか使ってくれるだろうという形で生活者を「待つ」のではなく、複合的なサービスの一翼を担うポジションを築くことで市場拡大のスピードは速くなっていくものと考えられます。 「場所貸し」のスタイルもあってもいいし、「大事なものをしまう場所」でもいいし、「趣味のものを利便性の高い場所に預ける」でもいいし、「貴重なものを責任持って預かる」でもいいし・・・。いろんな収納サービスがあって、これだけ選択肢があるということを生活者にPRする必要性があると思います。ヒトそれぞれが、モノを預ける「コト」にストーリーがあって、それを伝えることができるとユーザーがもっと増えてくれるのではないかと考えています。 ・近くの月極駐車場が一夜にして、コンテナが積み上がっていた。 ・営業に行っていた会社が転居した後、レンタル収納に変わっていた。 レンタル収納にしても、コンテナ収納、トランクルームについても、多くの「ハコ」は見つけることができます。身近にどんどんと収納サービスの拠点が増えている一方、あまり身近な人に収納サービスを利用しているヒトの話を聞いたことがありません。まさにこのギャップが、現在の収納サービスの置かれているポジションといえるのではないでしょうか。 その「ハコ」にいれる「モノ」や、収納サービスを利用したライフスタイル(=「コト」)が、まだまだ一般の生活者にイメージされていないのかもしれません。 各社のホームページに、収納サービスの収納イメージ写真は良く見受けられます。では、収納サービスを利用した方の生活は、どう変わったのでしょうか。それがとてもスタイリッシュであったり、合理的であったり、共感を産むようなライフスタイルであれば、真似たり、口コミで広がっていく可能性があります。今のままでは、「結構いっぱい入るんだね~」で終わってしまいます。 またまた他の業界の話ですが、リフォーム業界は悪徳・悪質事業者が蔓延り、リフォームサービスですら生活者が躊躇する市場となっていました。「ビフォー・アフター」というテレビ番組のおかげで市場イメージが一変したといった事例もあります。収納サービスの「ビフォー・アフター」、特にライフスタイルを変えるというPRができると若者を中心に広がっていく可能性があります。 このように、単なる不動産業ではなく、収納サービスは生活インフラの一部になっていることが次の成長ステージになると考えられます。
矢野経済研究所とは 様々なビジネス分野の市場規模、企業シェア、将来予測、メジャープレイヤーの動向等、マクロやミクロの視点から当該テーマを総合的に調査、分析。 成長を続ける収納ビジネス分野においてもいち早く着目し、2010年より徹底した取材に基づく詳細な調査レポートを供給。 従来、市場に関する情報の乏しかった収納サービスにおけるビジネスの将来性、ポテンシャル、課題を分析し、収納ビジネス業界の透明性向上に大きな貢献を果たしている。
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