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こちらは、「月刊プロパティマネジメント」2012.6月号より引用したものです。
現在、日本での「セルフストレージビジネス」は大きく分けて3つに分類できる。倉庫業法に基づいた管理が行われ、物品の補償義務も生じる「トランク ルーム」、ビルや専用施設の室内を区分して賃貸する「レンタル収納スペース」、主に屋外でコンテナを設置し貸し出す「貸しコンテナ」の3つである。 なお、消費者との契約形態が「物品の寄託契約(トランクルーム)」か「スペースの賃貸契約(レンタル収納スペース・貸しコンテナ)」かどうかで分けられてい る場合も多い。また消費者にはレンタル収納スペースを含めて「トランクルーム」と認知されている場合も多いため、本稿では理解を容易にすべく、あえて 室内型の「レンタル収納スペース」と屋外型の「貸しコンテナ」を分けている。 日本で最初期に生まれた形態は、倉庫業から発展したトランクルームである。1987年に中堅倉庫会社12社とJTやNTT東日本など大手企業の共同出資に より誕生し、FC展開で規模を拡大してきた押入れ産業が有名。一方レンタル収納スペース・貸しコンテナは不動産事業者を中心にこの10~20年ほどで拡 大してきた業態で、土地の有効活用やビルの空室対策、事業収益の多角化といった観点から都市部・郊外問わず参入が相次いだ。 主に地主が投資した物件をリースバックする、ビル内のフロアを借り上げるといった手法で管理・運営フィーを収益の根幹とするエリアリンク(95年創 業)やライゼ(91年創業)などが大手。両社とも、コンテナタイプから専用施設タイプまでさまざまなブランドを用意し、現在も店舗数を拡大している。 また2006年には三井物産子会社のストレージプラスが参入し話題を呼んだ。この分類の中でキュラーズは「レンタル収納スペース」に該当するが、同社は 基本的に物件を自社保有する方針であることは本文で述べた通りである。 セルフストレージビジネスに関する統計は、矢野経済研究所の「拡大する収納ビジネス市場の徹底調査」がみられる程度である。最新版である2011年の 調査によると、市場規模はトランクルームが33.1億円(前年比約4.7%増)、レンタル収納スペースが200.4億円(同約4.0%増)、貸しコンテナが221.9億 円(同約3.9%増)、全体では455.5億円(同4.0%増)。また、各社の拠点は全国で約7,000箇所、ユニット数(室数)は約32万室で、約170世帯に1つのスペー スが利用されているとしている(各数値は同社調査による推計値)。
BtoB向けのみだった倉庫業が、新業態の「トランクルーム」として一般消費者を対象としたビジネスを展開したことで、事業者の玉石混交状態がしばらくの 間続いていた。これを受けて86年には国交省による「標準トランクルームサービス約款」、91年には「トランクルーム認定規定」が策定・実施され、さらに 消費者保護をさらに推し進めるべく「認定トランクルーム」基準(94年)や「優良トランクルーム」認定制度(2001年)などを設けている。 しかし一方で、法的な規制が存在せず、物品の補償義務のないレンタル収納スペースや貸しコンテナも増加するなかで、各業態の名称・特性が混同される ケースも多々あり、物品の破損やカビなどの腐食といった対策を取らなかったり、事前の説明を怠った事業者と消費者間のトラブルは絶えなかった。 こうした状態を改善すべく、03年には国交省からの要請を受けて小田急電鉄、押入れ産業、ライゼなど7社が発起人となり、業界団体「レンタル収納スペー ス推進協議会」が設立された(キュラーズも09年に加盟)。同協議会では加盟企業に一定の基準を満たした店舗へ推奨マークの付与や、専用の保険制度の 提供などを行っている。また10年にはエリアリンクなどが加盟する日本セルフストレージ協会が発足し、業界内の横の連携も進みつつある。 不動産業界のなかでも数少ない成長産業であるセルフストレージ産業だが、「出店すれば儲かる」という黎明期は既に終わり、質の高いサービスが求めら れるようになってきているといえる。
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