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新たなステージが続々と登場 2018年の住宅・不動産業を見る【1】


2018年は住宅・不動産業界に新たなステージが続々と登場する。低額物件の報酬告示改正(1月1日)、媒介業者にインスペクションの活用を促す改正宅建業法施行(4月1日)、空き家活用としての“民泊新法”スタート(6月15日)などである。
また、昨年10月に発足した「新・住宅セーフティネット制度」と、それを支えるため同時に発足した「家賃保証業者登録制度」などが今年どういう動きを見せるのかも含めて、大きな関心が寄せられている。

キュラーズ トランクルーム

新・住宅セーフティネット制度が本格運用へ
空室増える賃貸住宅市場に波紋呼ぶか

今年は不動産業界にとって、その将来を占う新たなステージがいくつも登場する。昨年10月25日に施行された「新・住宅セーフティネット制度」は、空き家となっている民間の賃貸住宅を“準公営住宅”として都道府県などに登録することができる画期的なもので、2018年度中にどれぐらいの住宅が登録されるのか気になるところである(2017年12月25日現在で8 件35戸)。特に、同制度との相性がいいといわれるシェアハウスでの登録件数が本当に伸びてくるのかも注目に値する。この「新・住宅セーフティネット制度」の実現には、国土交通省の歴代大臣を担ってきた公明党が最も力を入れてきたともいわれている。同省は2020年度末までに17万5000戸の登録を目指す。

また、適正な家賃保証業務ができる家賃保証事業者の登録制度も始まった。住宅確保要配慮者(住宅弱者)がセーフティネット専用登録住宅に入居する場合には、家賃債務保証料に補助が出る。その際、登録事業者が家賃債務を保証する場合には住宅金融支援機構が債務保証の保険を引き受ける制度も創設された。これにより、保証事業者がいわゆる“住宅弱者”に対しても円滑に保証を行うようになることが期待されている。保証業務を営む会社は全国に220社程度あるが、昨年12月時点で既に22事業者が登録を完了。今後の登録の進展具合が、セーフティネット制度のゆくえを左右する可能性もある。

48年ぶりに媒介報酬告示を改正
小規模不特事業で中小宅建業者の参入なるか

国土交通省は空き家物件の流通を促すため、1月1日に媒介報酬告示を改正した。空き家の媒介は通常よりも調査費用などで経費がかかることが多い。にもかかわらず低額であるために、成約しても報酬がともなわず媒介業者にとって赤字になるなどの問題が指摘されていた。

そこで、物件価格が400万円以下の低廉な空き家で、現地調査費用を特別に要するものについては、現行の報酬額の上限に加えて18万円を上限に上乗せすることができるようになった。宅建業者の媒介報酬規程の改正は48年ぶりだ。

これを機に、媒介報酬の全面自由化論議に火がつくことは考えにくいが、そもそも報酬とは、「労働や骨折り仕事に対する謝礼の金銭」であるから、上限を規定することは本来なじまない。業法は「上限の範囲内であれば自由」という立て付けであるが、慣行として上限に張り付いているため、本来は報酬であるべきものが“手数料”になってしまっている実態もある。

昨年12月1日に施行された改正不動産特定共同事業法による“小規模不特事業”は事業者の資本金要件が緩和され(1億円→1000万円)、中小不動産会社が地域の空き家再生プロジェクトなどに小口の投資家資金(1人あたり100万円まで)を集めることができるようになった。国土交通省は、地方創生にも貢献できると意欲的だ。ただ、資本金要件は緩和されたが、管理(コンプライアンス)部門の責任者を実際の業務に係わる担当者とは別個に置かなければならないなど厳しい人的要件が課されている。そのため中小事業者が踏み切ることができるか危ぶむ声が出ている。

しかし、人口減少などで住宅市場の実需が縮小していく中、不動産投資マーケットに中小宅建業者が参入できるかどうかは、中小事業者が9 割以上を占める不動産業界にとっては大きな課題。また、優秀な人材の採用は今後の中小事業者にとっては不特法ビジネスに限らない最重要テーマである。その意味でも、こうした人的ハードルを克服する事業者が現れるかどうか注目したい。(「不動産経済ファンドレビュー」2018年1月5・15日合併号)

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