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構想から半世紀を経て実現した悲願 ―小田急線の複々線効果を見る【1】


東京都・新宿と神奈川県・小田原・江ノ島などを結ぶ小田急電鉄の複々線化事業が完了した。構想から半世紀、着工から30年、総事業費3200億円の社運をかけた大事業だ。列車の大幅な増発やスピードアップが可能となった。沿線の不動産マーケットにも好影響が見込まれる複々線効果を見る。

速達性高まり混雑率が150%に緩和
旅客数3000万人増、増収効果は50億円

「混んでいて遅い」という悪いレッテルを貼られていた小田急電鉄。沿線の人口増に輸送能力が追い付かず、利用者の多くは長年“痛勤”を強いられてきた。

複々線区間は川崎・登戸駅から渋谷区・代々木上原駅までの11.7km。今回、世田谷区内の梅ヶ丘駅から東北沢駅までの1.6kmが完成したことで、複々線の計画区間が全線開通した。複々線化の完成により、優等列車と各駅停車の走行帯を分離できるため、列車の速達性が確保され増発もでき、混雑率は192%から150%に緩和される。

構想から半世紀を経て実現した悲願 ―小田急線の複々線効果を見る

複々線のポイントは4点だ。1つ目は「混雑緩和」。朝夕の通勤通学時間帯を中心に列車が大増発。平日朝は下北沢駅着8時前後の1時間で、従来の27本から36本に増えた。さらに朝の通勤時間帯に特急ロマンスカーは新宿行きが3本増の9本、東京メトロ千代田線直通列車は1本増の2本となる。輸送力は従来比40%向上した。平日夕方から夜間にかけての下り列車は、快速急行を28本、千代田線からの直通列車を24本増発。快速急行のうち、新宿駅から多摩線への直通列車が新たに設定され、帰宅ラッシュ時は合計39本増発された。
2つ目は「時間短縮」。平日昼間を中心に運行していた快速急行を平日朝のラッシュピーク時間帯に増発した。快速急行は急行より通過駅が多く、特急を除いた最速の種別だ。約30㎞離れた町田駅から新宿駅まで、所要時間は最速37分。急行で49分かかっていたので12分短縮された。多摩線はこれまで、新宿駅への直通列車は各駅停車のみで、新百合ヶ丘駅で急行などに乗り換える必要があった。新ダイヤでは多摩線から新宿駅へ向かう通勤急行が新設。小田急多摩センター駅から新宿駅までの所要時間が最大14分短縮し、最速40分になった。利便性は帰宅時にも当然確保されている。 そのほか、新宿駅までの短縮時間は経堂駅が7分、登戸駅が9分、海老名駅と大和駅がそれぞれ11分。海老名駅・大和駅からの通勤時間は51~52分で、どちらも60分圏内に入った。
3つ目は「乗り換えなし」。朝の通勤時間帯を中心に、多摩線、江ノ島線から新宿駅への直通列車が増発した。千代田線直通列車も朝の通勤時間帯に11本から28本へ大増発し、代々木上原駅での乗り換えを少なくすることで都心部に流れる利用者へ配慮した。
4つ目は「座って通勤」。小田急多摩センター駅始発列車が6本新設されるほか、途中駅である向ヶ丘遊園駅始発列車が7本増の12本、成城学園前駅始発列車が6本増の8本、藤沢駅始発列車も5本増の13本で、それぞれ座れる確率が向上し快適性を増した。

小田急の試算によると、複々線化の効果は、3年目で旅客数が3000万人(3~4%増)、増収効果は50億円と見る。沿線への呼び込みとともに、他社線の乗客が小田急線へシフトすることを見込んでいる。

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