トランクルームマーケット情報

成長を続ける世界第5位の「日本のトランクルーム市場」

筆者:スティーブ・スポーン


日本のセルフストレージを海外の事業者に紹介するとき、日本とアメリカのセルフストレージの違いを取り上げることにしています。日本とアメリカで明らかに違うことのひとつは、その名称です。

ほとんどの国では「セルフストレージ」または「ミニストレージ」と呼ばれていますが、日本では複数の呼び方があり、「トランクルーム」や、英語に訳すと「レンタルストレージ」となる「貸倉庫」や「レンタル倉庫」といった名称が使われています。このうち、最もよく使われているのが「トランクルーム」です。

キュラーズ トランクルーム 日本のセルフストレージ市場規模

日本で最初にトランクルームが登場したのは1970年代です。当時は、倉庫業者によるトランクルームが一般的で、その実情は一般消費者向けの倉庫サービスといった程度のものでした。事業者が利用者の所有物を預かり、保管管理責任を負い、利用者が「預けた物」の受領証を利用者に渡すという仕組みです。事業者は倉庫業法による規制対象でした。このような初期のトランクルームが注目を集めることはありませんでしたが、それは工業的用途の色合いが濃く、製品としては不便だったことが理由と思われます。

1990年代になると、前述の倉庫業法に準拠したトランクルームに取って代わり、より顧客にとって使いやすい、規制の対象外の製品が出現しました。世界の他の地域で見られるセルフストレージと同様の製品です。日本市場の規模や成長に関しては、信頼できる過去のデータがないのですが、日本のセルフストレージ事業者最大手であるキュラーズが実施した最近の供給調査では、日本市場はおよそ240億円規模で毎年約10%の成長を遂げていると推定しています。

日本のセルフストレージ市場は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスに次いで世界第5位に入るでしょう。2009年にキュラーズが委託した第三者機関による調査では、日本市場が毎年10%の成長を続け、最終的に普及率が上位15都市で5%、または全国で2%に達すると、今後20年の間に1,730億円(21億米ドル※)規模にまで成長すると試算されています。(普及率とは世帯数に対するストレージユニット数の割合。普及率5%とは、100世帯につき5ユニットある状態を指す。)ちなみに全米セルフストレージ協会によると、アメリカ市場はおよそ1兆8,128億円(220億米ドル※)規模、普及率は全国で約10%となっています。
※1ドル=82.4円換算

このような市場の成長の原動力となるのは、最新型トランクルームサービスの認知度向上につきます。普及率と認知度について2008年にキュラーズが委託した第三者機関による調査と、矢野経済研究所の2011年調査報告書によれば、セルフストレージを利用したことがあるか、またはサービスを良く知っていると答えた日本人はたった15%でした。トランクルームというものがあることは知っていると言う消費者は多いかもしれませんが、それでもその製品のメリットを知らないか、それを使う主な理由を挙げられないという人がほとんどです。

成長に向けての大きな課題

日本のトランクルームビジネスの成長における最大の戦略的課題は、物件のソーシングと資金調達の2つです。まず物件のソーシングについてですが、アメリカと比べると日本では不動産がはるかに高価です。さらに トランクルーム事業者にとって重荷となるのが、一般的に人口の密集した都市部、つまり特に高価な場所に店舗を持たなければならないということです。その理由は、日本人は車を所有しない人も多いためで、そういった人は徒歩、自転車、電車で通勤しています。キュラーズの統計によると、ストレージが全て完成した状態で(というより、ほとんどのトランクルームはオフィススペースからの改装であるため、改装が全て完了した状態で)、日本で開発業者が負担する費用は1平方メートルあたり約30万円~40万円(1平方フィートあたり350米ドルから450米ドル※)になります。この費用には購入価格と改装費用が含まれます。アメリカの場合、セルフストレージREITが収集した情報と試算によれば、1平方メートルあたり約4万円~7万円(1平方フィートあたり50米ドルから75米ドル※)です。この課題を乗り越えるのは難しいですが、ひたむきな努力と自制心が助けになります。すなわち、機会を得るための深いパイプラインを築くひたむきな努力と、チャンスを待つ自制心や、売主がもっと意欲的になるのを待つ自制心です。
※1ドル=82.4円換算

もうひとつの課題は、資金調達です。私が知っている限り、日本でトランクルームアセットにノンリコース・ファイナンスを利用できたことはありません。国内の銀行はまだ、トランクルームアセットクラスの理解を深め、受け入れることに時間を割いていないのですが、それにはいくつか理由があります:

  • アセットクラスとして比較的新しい。
  • トランクルームアセットの取引がまだ行われていない。
  • 機関投資家の投資対象となる事業者が日本には少ない。
  • 日本の銀行は非常に保守的である。


こちらの課題については、時間とともに乗り越えることができると思われます。特に、日本の銀行は次のような状況になれば、トランクルーム取引の支援を迫られることになるかもしれません。

  • 総合商社といった大口顧客がトランクルーム事業を買収、または事業を始める。
  • 日本以外の国でストレージへの投資に成功したオフショア銀行、保険会社、金融業者が、トランクルームアセットへの投資を始め、利益を得るようになる。
  • 新しい信頼性のある事業者が市場に参入し、事業の高度化とノウハウをもたらす。これによってアセットクラスの信頼性が高まり、トランクルーム借り手の債務不履行の場合に代わりの事業者となる。


キュラーズとしては、時間と努力と想像力によって、これらの戦略的課題を最終的には克服できると楽観的にとらえています。また日本のトランクルーム市場はやがて当然のことながら、日本の経済大国としての順位と同様に、世界第2位か3位の規模になると思い描いています。

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