トランクルームマーケット情報

日本:「成長途中」の期待に満ちた市場 - 二桁成長を見せる前途有望な業界に投資家も注目

筆者:スティーブ・スポーン

世界のトランクルーム業界は、オーストラリア、カナダ、英国などのより成熟した市場と、ラテンアメリカ、中東、ロシア、東南アジアの一部などのごく初期の段階にある市場に二分されているように見受けられます。「堅調」、「平穏」、「現状維持」、「横ばい」といった表現によって特徴付けられる成熟市場を評する際には、成長-多くの場合はその欠如-がテーマとなり、事業者は収益性の最適化において内向きになりがちです。それに対して、初期段階の市場は拡大によっても特徴付けられますが、一方で建築上の規制、一般からの認知度、および税金や法律に関わる問題といった、成長を阻害する要素が大きな障壁となるように思われます。

そのような状況の中、確かな規模を有し、今なお年率二桁の成長を見せる「成長途中」の市場グループが存在します。それらの市場は徐々に成長初期の痛みを脱しつつあります。日本はそうした市場のひとつです。
※海外では一般的に、セルフストレージと呼ばれている。

キュラーズ トランクルーム
大阪(日本)にあるこのキュラーズ施設の上部に掲げられた看板は全高4mで、半径1km以内の20,000世帯、および隣接する高架高速道路を走る車両をターゲットとしています。

勢いを増す成長市場

2012年の市場規模が243億円だった日本は、米国以外ではカナダ、オーストラリア、英国に次いで4番目に大きなトランクルーム市場です。日本はそれら市場の中で最も速い成長を見せていますが、その普及率(世帯当たりのストレージユニット数)が他の三市場が1~4%であるのに対し、0.3%と極めて低いことを考えれば当然の結果と言えます。

2008年から2012年にかけて、日本市場は潜在総収益(GPR)で年平均10%の成長を実現しました。

キュラーズ トランクルーム
キュラーズはエリアマーケティング戦略を活用しており、その一例が街を走る自転車に取り付けられた広告です。

市場の軌跡に関する参考資料をさらに挙げてみましょう。屋内型トランクルーム施設の運営では日本最大手であるキュラーズの調査によれば、2010~2012年の収益成長率は平均15%でした。2013年の需要と成長も注目に値します。事業規模の拡大に伴って、前年比での成長が実際に加速しているのです。この一つの要因として、消費者による認知度の継続的な向上と日本経済全体の好転によって、健全で右肩上がりの自然需要が生じたことが挙げられます。日本市場は、信頼性のある、より成熟した市場と同様の絶対的規模となりつつある一方で、今なお新興市場のような急成長を見せています。

キュラーズ トランクルーム
一日に18万5,000人以上が利用するJR川崎駅(神奈川県川崎市)に掲示された広告です。

日本におけるトランクルーム供給状況

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 成長率
(5年平均)
事業者数 178 190 203 246 252 9%
施設数 1,447 1,496 1,666 1,898 2.035 9%
ユニット数 104,964 110,157 124,572 136,115 145,909 9%
GPR 17B 18.2B 21.1B 23.2B 24.3B 10%

成長に伴う痛みからの脱却

新興トランクルーム市場が経験する成長に伴う痛みの多くは、資産や税金、消費者に関する法律の曖昧さや不明確さによるものです。しかしながら日本の私的所有権や法治体制は、世界第3位の経済大国として当然のことながら、透明性と安定性を備えています。これらの法律は今後もトランクルーム業界の発展に寄与し続けるとともに、主に機関投資家の資金を呼び込む適格性において徐々に日本と他の多くの市場とを差別化してゆくでしょう。

その好例を挙げましょう。エバーグリーン・リアルエステート・パートナーズ・エルエルシーは、本年9月のキュラーズ買収にあたり、200億円の長期ノンリコースローンを調達しました。プルデンシャル・ファイナンシャル・グループの1部門であるPrudential Mortgage Asset Holdings 1 Japan投資事業有限責任組合が提供するこのローンは、より成熟した市場におけるトランクルーム資産あるいはプラットフォームを購入する場合の典型的な融資条件を数多く含んでいます。プルデンシャルには以前に他の市場でトランクルーム資産購入にあたり融資を提供し、成功を収めていますが、今回のローンはトランクルームを対象不動産として行われた日本で初めてのローンです。

今回のローンは、国内外の他の金融機関が続く道筋を付けたという点で、日本の業界にとって大きな進展といえます。これを可能とした一因が日本の財産権や法治体制の透明性および安定性であり、日本が他の新興トランクルーム市場と一線を画す重要な点と言えます。

キュラーズは昨年、日本のトランクルーム市場に非常に可能性を感じていました。そして現在、それに対する確信を一層強めています。私たちのこの確信は、資産クラスとしてのトランクルームの信頼性が着実に改善し、且つ、需要が実際に伸び続けていることによって裏付けられています。日本市場は、長期的には並外れた成長を遂げる可能性があります。機関投資家の注目がより集まり、結果より多くの投資資金が集まることにより加速的な成長を遂げる可能性があります。

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