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こちらは、「不動産経済ファンドレビュー No278」より引用したものです。
家に収納できない荷物を預けるセカンドクローゼットを提供するセルフストレージビジネスが拡大している。遊休地や中古ビルの空室を有効活用する出店形態で、東京をはじめ首都圏や都市部で広がった。米国では長期安定型のアセットとして注目され、セルフストレージに特化したリートも数多く存在する。日本のストレージ市場の現状と投資商品としての可能性をレポートする。
セルフストレージとは収納スペースをレンタルし、自宅の荷物を預けるサービスのこと。日本では「トランクルーム」という名称を使う業者が多く、消費者にも認知されている。トランクルームはサービス内容や形態より、1:倉庫業法に基づき倉庫業者が運営する倉庫型、2:空きビルや空室を改装してスペースを貸し出すレンタル収納型、3:遊休地などの屋外にコンテナを並べて貸すコンテナ型の3つに分かれる。 倉庫型は、倉庫業者が消費者向けビジネスとして1970年代頃から事業を始めた。海外進出する企業の増加に伴い、海外転勤者が荷物を預けるサービスを求めるようになったためだ。一般家庭のセカンドクローゼットとしての利用が目立つようになったのは、コンテナ型やレンタル収納型が登場した2000年前後から。エリアリンクは1999年にコンテナ型の1号店を千葉県市川市に出店。倉庫業者12社とJT、NTTなどの出資により1987年に設立された押入れ産業は2001年、倉庫型のFC展開に加えてレンタル収納型の店舗展開を開始した。同年には米国大手投資ファンド、バウポストグループがピートモント・ストレージ・マネジメント(現キュラーズ)を設立、レンタル収納型で日本市場に参入を果たした。2006年には三井物産が都市開発事業部の新規事業としてストレージプラスを立ち上げ、レンタル収納型でリート組成も視野に入れた店舗展開を進めている。
矢野経済研究所の「収納ビジネス市場に関する調査結果2011」(各数字は同社調査に基づく推計値)によれば、2011年のストレージ市場の規模は前年比4%増の455.5億円。内訳を見ると倉庫型が33.1億円、レンタル収納型が200.4億円、コンテナ型が221.9億円で、いずれも前年比で4%前後伸びている。コンテナ型が主力のエリアリンクは、ストレージ運用事業の2011年売上高が、2007年比53%増の48.9億円に伸長。レンタル収納型を全国で45店舗展開するキュラーズは、2012年売上高が2008年対比で倍増の35.6億円となる見込みだ。 市場拡大の源泉は何か。ストレージ業者各社とも「消費者の認知度向上による需要増加に尽きる」と口をそろえる。人口密度が高い東京を中心に各社が出店攻勢を掛けた結果、消費者が街中や近郊で「トランクルーム」を目にする機会が増えた。また“断捨離”の一環としてレンタル収納を活用するなどその使い方がメディア等で取り上げられるようになり、日常生活の中で気軽に利用できる身近な存在として認識され始めたことが需要喚起につながっている。郊外から都心に移り住む都心回帰の過程で、荷物を整理するために利用するケースも増えている。東日本大震災以降は、地震に備えて家財道具をトランクルームに移すリスク分散の動きも目立つ。 しかし、普及率は未だ低い。レンタル収納とコンテナ型を併せた室数は全国で約32万室と推計され(矢野経済研究所)、これを2011年の総世帯数5355万世帯と比較すると普及率は実に0.5%、170世帯に1室しか利用されていないことになる。20.1万室が集中している1都3県でも80世帯に1室という状況だ。米国の世帯数当たりの普及率が約10%(全米セルフストレージ協会調べ)であることを考えれば、仮に日本の限界普及率が5%以下であったとしても出店余地は相当に大きい。
トランクルームの出店戦略は各社とも共通している。空いている土地、建物、床を保有するオーナーや地主に対して有効活用を提案する形で出店が進められてきた。レンタル収納は東京や神奈川を中心とした都市部の住宅密集地域に多い。車で搬入するお客が多いため必ずしも駅近である必要はなく、幹線道路の近接地が求められる。立地や築年数の問題により空室が長く続いているオフィスビルや商業ビル、住宅には適さない狭い土地を賃借または所有し、建物を建設あるいは改装した上でトランクルームとして消費者に貸し出す。コンテナ型も住宅地に近い郊外の土地を賃借し、コンテナを置いて貸す仕組み。いずれも1室当たりの広さは0.5~6坪まで幅広い。 平均月額賃料は東京23区で1㎡当たり7000~8000円、東京都下を含むその他地域は5000~6000円、郊外立地のコンテナ型は5000円以下が目安。オフィスやレジよりも賃料の変動幅が小さく、「新規の募集賃料は値上げできている」物件も少なくないという。大手業者の現在の平均稼働率は80%前後。出店から損益分岐点に達するまで半年~1年程度、安定稼働まで2年程度掛かるため、新店を含めると稼働率は低く算出される。「他の不動産に比べて1テナント当たりの収益が小さいため解約リスクが低く、解約率も低い。一度埋まれば安定稼働が長期間継続する点がストレージ事業の一番の特徴」とストレージプラスの渡辺貴衡社長は説明する。オーナーに支払う賃料や取得価格をいかに抑え、90%以上の安定稼働にいかに早く持っていくかが、ストレージビジネスの成否を分ける。
事業安定性が高いストレージだが、対消費者の面で一定のリスクがある。それは賃料滞納と荷物の置き去りだ。レンタル収納型の大手14社で組織するレンタル収納スペース推進協議会の吉田得生事務局長は「消費者保護の色合いが濃い民法を念頭に置けば、置き去りにされた荷物は簡単に処分できない厄介な問題」と指摘する。寄託責任の有無を巡ってクレームが発生するリスクもある。倉庫型が荷物の補償義務を伴う寄託契約であるのに対して、レンタル収納型やトランク型は荷物の補償義務がない賃貸契約だが、いずれもトランクルームという名称が使われているため消費者が混同しやすいからだ。ただ、こうしたリスクは「契約書に万一の場合の対処方法を明記し、十分な説明を行えば避けられる」との認識を持つ業者が多く、現状ではクレームや裁判まで発展するケースは稀なようだ。 ストレージ先進国の米国では、収益の長期安定性が評価され、投資商品としての存在感も大きい。セルフストレージに特化した最大のリート、パブリック・ストレージは時価総額で1.8兆円と巨大だ。一方、日本は投資対象にすらなっていない。米国より土地代が高いため所有よりサブリースでの展開が大半であること、物件規模が小さいことなどが主な要因だ。キュラーズのスポーン社長は「今のセルフストレージ市場を10年前の物流倉庫の状況と捉えると分かりやすい」と話す。消費者がより良いサービスを求めるようなれば物件の質が向上し、それに従って市場の認知度と需要が高まれば、オペレーターの参入が増えて流動化は加速すると見ている。米国投資家が日本市場の視察に数回訪れるなど水面下で投資を検討する動きがあることを考えれば、投資適格までの道のりはそう遠くないかもしれない。
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