トランクルームマーケット情報

成長見込めるトランクルーム事業 物件取得を加速 トランクルーム国内最大手キュラーズの物件取得戦略


「物件が買えない」。事業用物件を専門に扱うある不動産仲介担当者の嘆きだ。
急激な円安によって海外から見ると割安に映る日本の不動産。事業性を度外視してでも買いに向かってくる中東・アジア系の富裕層、資金力を有する海外ファンドの市場参入が顕著だ。
安く仕入れて高く売るのがビジネスの基本。そうした視点からすれば現状の不動産投資市場にうまみはないはずだ。
だが、そうした環境下で平成26年11月、トランクルーム事業で国内最大手のキュラーズ(東京都品川区)が「物件取得を再開・加速させる」と宣言した。

キュラーズ トランクルーム

同社の中核事業のトランクルームとは、荷物等を一時的に保管できるトランクルーム。個人客が利用しやすいように1区画は0.5畳~5坪程度。利用者は月極で利用契約を結び、一次保管場所として使用する。
全国10都市で48拠店、約3万室運営している。トランクルーム事業自体は珍しくないが、同社の特徴はすべての施設が自社保有という点だ。トランクルーム事業は利用単価を上げない限り、いかに施設数を増やすかがポイント。競争が激化している現時点でも同社代表取締役のスティーブ・スポーン氏は物件取得の加速に自信をみせている。
「確かに物件価格は上がっているが、現時点でも当社が想定する利回りは十分に得られると確信している。オフィスビルの利回り水準は5%、マンションが6%として2%以上の上乗せが可能だ。入札になっても競争力を発揮できる」

キュラーズ トランクルーム

この自信の背景はどこに求められるのか。一つはライバルへのアドバンテージ。
トランクルーム事業は住宅街に比較的近いエリアで展開される。主な案件入札の競争相手はマンションデベロッパーだ。マンションの場合多くは取得物件の解体が必要となる。既存物件の解体費用が入札金額に反映させざるを得ない定めを背負っている。一方トランクルームの場合は、既存物件がビルでもマンションでも内装の改修だけで開業することができる。
そして、もうひとつはキュラーズが有する豊富な資金力だ。平成25年9月に同社のオーナー企業が世界的不動産運用会社である米国のエバーグリーン・リアルエステートパートナーズ・エルエルシーに代わった。スポーン氏はこう強調している。
「エバーグリーンはすでにアメリカ、ヨーロッパ、ブラジルでトランクルーム事業に多額の投資を行っており、長期的な成長事業としてトランクルーム事業を高く評価している。エバーグリーンの資金力を背景に、物件取得を加速させることが可能になった」
平成26年8月28日、エバグリーングループの一員として、国内不動産市場において初のトランクルーム物件を取得。東京・阿佐ヶ谷において中規模物件を取得後、改修工事は順調にすすんでおり、来年上期には早々にトランクルームとしての再稼働が予定されている。
トランクルーム事業における日本市場は毎年約10%の成長を続けており、平成20年の市場規模約284億円から平成25年度は1.6倍の約463億円へ拡大成長している。東京五輪が開催される2020年には700億円、2027年には1000億円市場へと成長する可能性を秘めている。日本におけるトランクルームの普及率はわずか0.3%に過ぎず、先進国の中では最低水準とされ、需要があるにも関わらず供給数が足りない状況といえる。
またトランクルームはオフィスビルと比べて駅前立地にはこだわらない。どちらかといえば住宅地に近いセカンド立地、サード立地を好むこともあり、立地や築年によって稼働率に苦戦し、物件価値が大幅に下がったビルでも取得対象になる。物件売却先としてトランクルームは有力な候補先となっているのだ。

トップに聞いた 物件取得加速の理由

アメリカの巨大ファンドのエバーグリーンが昨年9月からキュラーズのオーナーになりました。
エバーグリーンは当社のビジネスモデルを深く理解し、評価を高めたことで物件取得を加速させることに決定しました。当社が取得ターゲットにしている物件は、住宅地域に近い小規模なオフィスビルや倉庫物件。通常テナントニーズが見込めず空室になっているケースが多いので、トランクルーム仕様へコンバージョンするのも比較的容易に行えます。
今後の物件取得の目標としてはキャパシティで年間7~10%の増加を狙っています。物件取得価格については特に高騰しているとは感じていません。もちろん高利回りの物件なら問題ありませんが、レジデンシャル・オフィスビルオーナーが期待している利回りより高い収益が下限となっており、現在でも十分達成できます。
日本の消費者は品質が良ければ多少割高感があっても購入されるケースが多く、トランクルームも同様のことがいえます。ビル1棟をトランクルームとして運営している当社の場合、BEMS制御による24時間空調や湿度管理を徹底し、高品質なサービスを提供してきたことで顧客を獲得してきました。この方針は変わらず、改修コスト等は惜しみなく投資していこうと考えています。

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