トランクルームマーケット情報

トランクルーム最大手・キュラーズ トップが語る出店戦略


創立15年目で50施設に到達 国内普及率は0.3% 今後5年で100店舗目指す

トランクルーム国内大手のキュラーズが今年4月、店舗数50棟に到達した。
会社創立から15年目での大台達成となったが、同社のスティーブ・スポーン代表取締役は「今後5年間で施設数100棟を目指す」と、今後の出店計画を加速化させると宣言した。競合他社とは異なり、施設の自社保有にこだわる同社独自の出店戦略について聞いた。

念願だった中野区へ進出 600室超の旗艦店が開業

トランクルーム国内最大手であるキュラーズ(東京都品川区)の50店舗目となる「キュラーズ中野店」開業を間近に控え、15日、開業記念パーティーが実施された。創立15周年を迎えるキュラーズにとって記念すべき50店舗目となり、同社のスティーブ・スポーン社長の喜びもひとしおだ。

開業記念パーティーには約150名が参加。施設入口付近でテープカットを行うと下校途中の学生や通行人から祝福の拍手が巻き起こる。その後、同店の屋上にて懇親会が開かれた。スポーン社長は「とにかく立地が抜群に良い。施設の半径3km圏内に33万世帯があり、施設の目の前の道路は人通りも多い。そして、当社運営施設として600室超というトランクルーム事業を行う上で最適な大きさだった」と大絶賛。開業前からすでに多くの利用予約が入り、需要の高さを示している。

「足で稼いで」物件取得に成功 すでに53店舗まで目途

キュラーズの出店戦略はトランクルーム業界では異端とされる。東京を中心に、大阪、名古屋、福岡といった地方中核都市で既存不動産を取得してトランクルーム仕様に改修・運用するというもの。運営代行や管理委託形式ではなく、物件取得が前提になるため、施設数の急激な拡大にはつながらなかった。しかし、その一方で、スポーン社長は「5年後の創立20周年の時には100店舗を達成しているはずだ」と強気の姿勢を崩さない。

元々、同社が店舗を出店(物件を取得)するにあたり、信託銀行や不動産仲介業者からの紹介で候補物件を探していたが、「キュラーズ中野店」はまさに「足で稼いだ物」(スポーン社長)だ。同店舗が位置する中野区は定住人口が多く、トランクルーム需要が見込めるエリアだが、これまで中野区への出店は皆無だった。そのため、既存の方法で出店可能物件を探すだけでなく、自社内にソーシングチームを新設。2ヵ月にわたり中野区内のあらゆる通りを歩き、候補物件をリストアップ。最終的には100物件に達したという。そこから100店舗のリストをもとに物件オーナーに直接連絡し、4ヵ月以上の話し合いを経て最終的に物件譲渡の合意を取り付けたのである。

「売買市場には出ていなかった物件でしたが、時間と労力をかけた甲斐があった。中野区は当社が最も出店したかったマーケット。フラッグシップ施設のひとつに数えられる」(スポーン社長)

外資系企業とは思えない「泥臭い」営業手法によって物件を探し出したが、スポーン社長は「こうした取り組みは即時効果を発揮するのではなく、物件売却を検討し始めた際に当社の存在が印象づけられれば将来的な取得戦略に寄与するはず。『物件取得に本気で臨んでいる』ことを周知することで情報も集まりやすくなる」と、その狙いを説明する。事実、物件取得は加速しており、すでに白金の他、53店舗まで開業の目処がついている。

トランクルームの認知度が向上 潜在的な需要増に対し出店加速

「キュラーズ中野店」開業前に近隣住民への挨拶回りを実施したそうだが、多くの住民がキュラーズ、もしくはトランクルームの存在を認識していた。そして、キュラーズの既存店舗の稼働率はほぼ90%超に達しており、今後の成長戦略を考えた場合、利用単価を上げるより新規物件をいかに迅速に増やしていくかが鍵になる。しかし、足枷になりそうなのが少子高齢化によるトランクルーム需要の減退だ。過度な店舗数の増加は稼働率低下を招きかねないのではないだろうか。

この疑問に対してスポーン社長は「競合他社も当社と同様に物件を取得してトランクルーム事業を行うケースが出てきており、業界の知名度向上、優れたビジネスモデルだということが周知され、需要の拡大を呼び込んでいる」と指摘する。キュラーズが毎年実施し、4月14日に発表した「トランクルーム産業市場動向調査」によると、トランクルーム市場が全国で7,300店舗に達し、ファミリーレストラン約9,000店舗に匹敵する規模へと拡大。延べ室数は34万室を超え、468億円市場規模へと成長を遂げている。さらに、東京五輪が開催される2020年には700億円市場へと成長を遂げる可能性があると指摘している。スポーン社長は少子高齢化に対して次のような見解を示す。

「人口減少は郊外エリアが直面する問題。当社のビジネスマーケットである東京をはじめ大阪、名古屋は人口流入が勝っており、都市機能としてトランクルームはより求められるようになるはずだ」(スポーン社長)

アメリカでは不動産投資セクターの主要アセットに名乗りを上げているトランクルームだが、日本での屋内型トランクルームユニット(室)普及率は0.3%(350世帯に1世帯が利用)と先進国の中では圧倒的に低い水準に留まっている。いわば、需要があるが、供給数が足りないのが現状。住宅地に近いセカンド立地、サード立地に建設され、空室に悩む既存ビルの利活用のひとつとしてトランクルームは最適な出口戦略となる。

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