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新たな開発によって誕生した大規模ビルは、個人経営の中小ビルに大きな影響を与えました。しかし日本国内では、いまだに多くの大規模開発が進行中なのです。 特に都内各所では、2020年の東京オリンピックに向けた建て替えや新規開発が急ピッチで進められています。今後3年間に供給される床面積は年間平均110万㎡ほど(森トラスト調べ)で過去20年間の平均供給量とほぼ同じですが、少子化やオリンピック後に予想される景気後退などを考慮すれば、多すぎるといっていいかもしれません。大規模ビルも中小ビルも同じ土俵に立たざるを得なくなった今日、中小ビルに何らかの施策が必要であることは明白なのです。
とはいえ大規模ビルに真っ向から立ち向かうのは得策とはいえません。スペックでかなわず、設備でかなわず、しかも賃料が同等なら、常識的に考えて中小ビルは大規模ビルの敵ではないのです。さらに昨今、ICTの発達によって働き方の多様化がすすみ、これまで中小ビルのテナント候補であったベンチャー企業やフリーランサーが従来型のオフィスを必要としなくなってきています。今やパソコンがあればどこでも仕事ができる上に、その受け皿としてシェアオフィスやコワーキングスペースが増加しているからです。中小ビルへのニーズが減少する一方、新規開発がすすむ大規模ビル。中小ビルの経営はすでに、崖っぷちに立たされているといっていいかもしれません。 それともうひとつ考慮にいれなければならないのが、平成25年度に税制改正された相続税への対策です。特に昨今、バブル期に建てられた個人経営のビルの多くが世代交代の時期を迎えつつあります。実質的に増税となったこの税制改正を、はたしてどれほどのビルが切り抜けられるでしょうか。 こう書くと、悲観的になってしまう方が多いかもしれません。しかし少しでも収益が見込め、継続性が見出せるのであれば続けるべきですし、現に頑張ってビル経営を続けている中小ビルのオーナーはまだまだたくさんいます。さまざまな試行錯誤を繰り返し、個人オーナーならではの工夫を重ねながら、大規模ビルに負けまいと自分のビルを守っている方たちは、決して少なくないのです。私も、そんな「個人オーナーだからこそできること」の力を信じている一人なのですが。
不動産ビジネスライター 久保純一 氏 不動産専門紙などで専属記者として、不動産ビジネスの最前線を長年にわたり取材。徹底した現場主義による、綿密な取材に基づいた記事には定評がある。独立後、不動産ビジネスにまつわる豊富な知識、経験を元に、現在は不動産経営者向け専門紙、物流不動産ビジネス誌、経済誌、専門サイトなど幅広いフィールドで活躍中。
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