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少子高齢化によって人口が減少するなか、不動産をとりまく環境も大きく変わってきました。特に課題となっているのが空き家の増加ですが、これは不動産オーナーとしては非常に頭の痛い問題です。とはいえ根本的な解決策である人口増加が早急には見込めない以上、何らかの施策を実施してしのぐほかありません。もっとも効果的なのはニーズに合った建物への建て替えですが、これもコストを考えればそう簡単にはいきません。そこで検討したいのが、「減築」という手法です。
減築とは読んで字のごとし、「建築物を減らす(=建物の規模を縮小する)」というものです。端的に言うと、ビルやマンションなら5階建てを2階建てに、一戸建て住宅なら4LDKを2DKにと建物そのものを小さくしてメリットを得ようという、いわば増築とは真逆の考え方です。期待できるメリットとしては耐震性の向上、空調効率・通風・採光の向上による光熱費の削減、固定資産税の減額などが挙げられており、耐震や人口減少問題が顕在化してきた2011年ごろから注目を集めるようになってきました。前述しただけでも十分なメリットがありますが、実は賃貸不動産オーナーとしてもっとうれしいメリットが期待できます。それは、時代に合ったニーズへの対応が建て替えずにできるという点です。 例えば、団体観光客が減少して稼働率の低下に悩んでいた14階建てのある温泉ホテル。そこでは建物を4階建てに減築して耐震性を向上させるとともに、内装を家族向けにリニューアルして温泉施設も刷新しました。その結果、新たな客層の取り込みに成功して稼働率が向上し、客単価が上がって経営状態も良好になったということです。取り壊しも大規模な新規工事もないため環境負荷も低く、しかも費用は建て替えの10分の1というから驚きです。 もっともこれは最高にうまくいった例のひとつですので、どの建物でもこんなに費用対効果が見込めるというわけではありません。減築はケースバイケースなので一概にはいえませんが、新築のコストの約半分というのが一般的な目安となっているようです。 減築は基本がダウンサイジングのため、トータルでの収入は減るかもしれません。しかしそのぶん支出も減らすことができるので、低コストで実現できれば収支のバランスから見ても十分検討に値する施策といっていいでしょう。何より人口減少がさらに進むことを考えれば、古くて大きくて耐震性の低い建物の収益力は下がっていく一方です。これを持て余すよりは、時代に合った建物に生まれ変わらせるべきなのではないでしょうか。もしこれから建て替えを検討されているオーナーがいらっしゃったら、減築と比較してみてもいいかもしれません。
不動産ビジネスライター 久保純一 氏 不動産専門紙などで専属記者として、不動産ビジネスの最前線を長年にわたり取材。徹底した現場主義による、綿密な取材に基づいた記事には定評がある。独立後、不動産ビジネスにまつわる豊富な知識、経験を元に、現在は不動産経営者向け専門紙、物流不動産ビジネス誌、経済誌、専門サイトなど幅広いフィールドで活躍中。
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