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賃貸不動産市場は十数年来の過剰供給が続いています。市場全体を活性化させるような根本的な需要増大策が見つからない限り、不動産オーナーは今後さらに厳しい選択を迫られることになるでしょう。しかしこうしたなかにあってなお高稼働を続けている物件も少なくありません。そのキーワードの一つが「小さくてもプレミアム」です。
例えば賃貸不動産市場のバロメーターともいえるオフィスビル市場。東京23区だけで毎年平均100万㎡ものフロアが供給されています。その中心となっているのが大規模な高層ビルですが、これだけの貸床を埋めるだけの新規テナントを探すのは容易ではありません。そもそも広大なフロアを必要とする企業など数が限られています。今や完全な借り手市場。新築物件が建つたびにそこに移転する企業も珍しくありません。そこで築年数を経た大規模ビルではフロアを小割り化して規模の小さなオフィスとし、中小企業の誘致に力を入れ始めています。しかし既存の中小オフィスビルは、これに対抗できる手段があまり残されていません。賃料でさえ、大規模ビルと中小ビルの差が縮まってきているのです。そこででてきたのが、大規模ビルの設備や機能、ファシリティを中小ビルに導入しようという動きです。 その構造にはひとつのパターンがあります。1階は広々としたロビーにしてテナントは入れず、場合によっては有人の受付も置きます。エレベーターは2基以上。照明や空調もグレードの高いものを採用します。意匠にもこだわってプレミアム感を演出し、来館者に「小さいけれど良いビル」と思わせる演出を施します。入居テナントは基本的に1フロア1社。水回りや共用部も広くとり、ゆったりとした空間を構築するのです。レンタブル比は下がりますが、小さくてもこれだけの機能を備えたビルはそうありません。競合する物件が少ないぶん、オーナーとしても強気にでることができます。 こうした取り組みは、オフィスビルだけでなく賃貸住宅でも見られはじめています。高層マンションの地震に対する不安を感じている人や、大規模マンションの騒々しさを避けたい層からのニーズが意外と強いようで、いずれも高稼働を続けているようです。 もっとも、新築はともかく既存の建物でこうした物件を構築するのは簡単ではありません。しかし肝心なのは「プレミアム」という概念の理解であって、完璧にプレミアムな物件をつくるということではありません。規模の大小にかかわらず、プレミアムを求める層は確実に存在する。それを認識したうえで、実現できるところから実現していけばいいのです。そして何より大切なのは、規模が小さいからといって大規模物件に気後れすることなどない、という意識です。これらを念頭に置いて物件を構築していけば、あなたの物件もきっとすばらしくプレミアムなものに生まれ変わることでしょう。
不動産ビジネスライター 久保純一 氏 不動産専門紙などで専属記者として、不動産ビジネスの最前線を長年にわたり取材。徹底した現場主義による、綿密な取材に基づいた記事には定評がある。独立後、不動産ビジネスにまつわる豊富な知識、経験を元に、現在は不動産経営者向け専門紙、物流不動産ビジネス誌、経済誌、専門サイトなど幅広いフィールドで活躍中。
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