トランクルームマーケット情報

不動産有効活用最前線 ~トランクルームに向いているビル~

筆者:不動産ビジネスライター 久保純一 氏

ビルインタイプとは、ビルやマンションを改装して小割化したトランクルームを指します。管理スタッフが常駐している施設も増えてきており、屋外設置のコンテナタイプに比べ整ったセキュリティと管理体制がアピールポイントとなっています。もうひとつの特徴が空調で、エアコンや換気設備を設置して温度・湿度を管理している施設が多くあります。書類や衣類、木工品などの痛みやすいものでも安心して預けることができ、温度・湿度管理に難のあるコンテナタイプとは一線を画しています。

昨今ではビル一棟をまるごとトランクルーム専用の施設に改装し、清潔感や利便性を高めた高品質なトランクルームや、新築の施設も出現しているようですが、いずれもまだ数は少なく、現在運営されているビルインタイプはほとんどが既存のビルやマンションの一部フロアを改装したものです。トランクルーム経営を空室活用の一環として考え、保有するビルやマンションをビルインタイプのトランクルームに改装するオーナーは日に日に増えています。では実際に改装するにあたって、どんな建物がビルインタイプのトランクルームに適しているのでしょうか。

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前述のとおり、ビルインタイプの多くが空調などの設備を備えています。天井高や床荷重も、荷物を預かるのですから大きなほうがいいかもしれません。さらに安全性や万が一のことを考えれば、建物の耐震性や防火性も高めるべきと思われる方もいるでしょう。しかし結論からいえば、実はこうした「後付け」の設備はそれほど多くを必要としません。現役のビルやマンションとして機能している建物であれば、トランクルームの“素材”としては十分なのです。

一般的なパーティションで仕切るタイプのトランクルームであれば空調や照明は既存のものがそのまま使用できますし、床や壁もそのままでOKです。そもそもビルインタイプのトランクルームの利用で最も多いのは、一般家庭やオフィスで不要不急のものをしまっておくという使い方。ですから天井高や床荷重も特に高い性能は求められません。一般的な現役オフィスビルであれば内装もそのまま、専用のパーティションで仕切ればトランクルームに早変わり、というわけです。ただし大事な荷物を守るわけですから、既存のままでいいとはいえ耐震や防火の備えは必須です。もっともこれも、現在の法令基準を満たしていれば必要にして十分。耐震・防火についてはむしろ設備の故障や経年劣化がないか、メンテナンスのほうが大切かもしれません。

建物の設備的な面でいえば、既存のほとんどのビルをトランクルームにすることができるといって過言ではないでしょう。しかしそれは、どんなビルでもトランクルームに改装するだけで儲かる、ということではありません。同業他社の動きや相場、求められるサービスなど、ニーズを調べずに改装したところで成功は近づきません。今あるビルをどう使うか、どうアレンジするか。ビルをトランクルームに改装する際、最も大切なのはその判断であるといって過言ではないでしょう。

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