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そもそも「民泊」とは、民家に客を宿泊させることを指した言葉です。民家を利用した宿泊施設としては民宿やペンションがありますが、これは旅館業法に基づいた設備を設け、都道府県知事等の許可を得て営業できるものです。これらは法律上は簡易宿所と呼ばれる、合法的な営業行為です。 一方の民泊にも、有償で民家に宿泊させる行為やそのための家という意味が加わっています。端的にいえば、自分が住むあるいは管理している家に宿泊する人を募集し、宿泊させることで宿泊費を得るというものです。旅館業法ではイベント時や農業体験、特区として認められた地域などの場合に限って民泊を認めてきましたが、昨今こうした要件を満たしていない事例が増えています。そのきっかけとされるのが2008年、民家と宿泊客を仲介するアメリカのウェブサイト「Airbnb」の開設です。
日本では2003年以来、外国人観光客の増加を経済成長につなげようという取り組みが続けられていましたが、特に2015年は約1970万人と急増。2020年の目標が4000万人とされる一方で、宿泊施設の不足が懸念されています。民泊は、その受け皿としての注目度が上がっているのです。そして、民泊に期待されているもうひとつの役割が空き家対策です。現在、日本にある空き家は約820万戸。これを民泊として活用し、宿泊施設不足と空き家対策を同時に行おうというのです。 空き家対策として見た場合、民泊はひじょうに魅力的に見えます。例えばワンルームマンションに1泊5000円で泊めた場合、月に15日稼働すれば7万5000円、20日稼働すれば10万円の収入となります。都心部は別として、7万5000円の賃料で貸せるワンルームマンションがどれだけあるでしょうか。旅館や民宿と違い接客も食事の提供も不要で、しかも宿泊客の募集から申し込み受付、宿泊費の受け取りにいたるまで全てネット上で自動的にやってくれるのです。マンションやアパートを借りてでもやりたいという人が出てくるのもうなずけます。実際に、既築のアパートやマンション、ビルなどを取得して1棟まるまる民泊として営業しようという動きもあるほどです。 しかし現状では、有償での民泊は要件を満たさない限り違法行為にあたるとされています。利用がひろがるとともにトラブルも増加しており、特に建物オーナーの許可を得ずに入居者が民泊を運営していたというケースは跡を絶ちません。また不特定多数が常に出入りするわけですから、地域の環境にも影響を与えることになります。 政府では2016年中に民泊の規制緩和についての結論を出すとしています。空き家の活用という観点で見れば大きな可能性を持つ民泊ですが、判断はその結論を見てからでも遅くはなさそうです。
不動産ビジネスライター 久保純一 氏 不動産専門紙などで専属記者として、不動産ビジネスの最前線を長年にわたり取材。徹底した現場主義による、綿密な取材に基づいた記事には定評がある。独立後、不動産ビジネスにまつわる豊富な知識、経験を元に、現在は不動産経営者向け専門紙、物流不動産ビジネス誌、経済誌、専門サイトなど幅広いフィールドで活躍中。
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